3rdSTORY:本当の気持ち








頭上には青い空。
隣には、例の先生。
京子はゆっくりと話し始めた。




「うちの親、仕事人なんですよ。」
「いいじゃん」
「はい。自分で言うのもなんですけど、本当に凄い人たちなんです」
「うん」
「父は有名な外科医で、今まで多くの人を救ってきました」
「うん」
「母は外資系の企業に勤めていて、世界を駆け回るキャリアウーマンなんです」
「そりゃ凄い」
「そんな父と母を、私は凄く尊敬しているんです」
「そうか」
「自分の娘に構う暇がないほど・・・」
「・・・・」
「でも!幼いながらに、仕事の事はよく理解してるつもりだったし、我が儘も言いませんでした。」
「うん」
「自分たちの仕事に誇りを持っていて、本当に本当に凄いと思ってます」




京子がそういうと、三島は相槌を止めた。
一瞬沈黙になったが、そんなこと構わずに京子は続けた




「母は何も言わないけど、父は医師になれってうるさくて」
「・・・・」
「だから、いつか私も両親のようになりたいって思いました。けど・・・」
「・・・けど?」
「私・・・血が」
「血?」
「血が見れないんです・・・」
「ぶっ・・・わははははは!!!!!」
「うー・・・」




京子が今まで話さなかったのは、たったそれだけの事が理由だった。
周りからは、期待している。の言葉ばかりで、でも本当の事が言えなくて。
医師にはなりたかった。
くだらない理由のせいで、夢を諦めそうになった。
けど、何か医学に関することはないか、と熱心に調べた。
漸く笑いが治まったのか、三島は口を開いた。




「いや、そんなオチだったとは・・・」
「どんなオチだと思ったんですか!!」
「他に夢があるのかと」
「・・・それもあります」
「医者以外に?」
「医者って言えば医者ですけど・・・」
「何?」
「法医学を学びたいんです」
「またマニアックな」
「興味あるんですよ、そういうの」
「どんなのだっけ?」
「犯罪捜査や裁判で必要とされる社会医学のことです」
「何で学びたいんだ?」




しどろもどろになりながらも、理由を話した
一方的に話しているようだったが、所々三島は質問を返してきた。
三島はふーとため息をついて、首を鳴らした。
そのまま少しの間、空を見上げていた。
反対に、京子は少し、地面を見ていた。
すると三島が話し始めた。




「ちゃんとした理由があるんじゃねぇじゃねぇか。」
「へ?」
「それ、親御さんに言えよ」
「でも・・・」
「俺に言えたんだから、大丈夫だ」




そのたった一言が、京子にとっては嬉しかった。
気持ちが軽くなった気がした。




「じゃ、俺は仕事があるから」
「・・・」
「頑張れよ。」




そう言うと三島は行ってしまった。
ありがとうの一言も言えずに、京子は三島の後ろ姿を見送るだけだった。
『大丈夫だ』
京子は決意した。
































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2/13:3rdSTORY完成
誤字脱字など御座いましたら御連絡下さい。
法医学に関しましては、ヤホーさんから引用させていただきました。
理由は初め書いていたんですが、止めました。
ま、ひとぞれぞれ感じ方がありますよね。
読んで頂いてありがとうございました

09.2/13:樹

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